READ
読む
新規通信
会員登録
お知らせ・日記・動画など
DATE : 2026.09.24
私が現在、このホームページのダイアリーに力を入れて書いているのには理由がある。
それは、私自身の「終活」の一つだからである。
私がこの世を去った後も、自力整体に興味を持った人たちが、いつでも自力整体について学べるように、資料をそろえておきたいと考えている。
いわば、「自力整体図書館」 をつくることが、私の願いなのである。
現在まとめているのは、これまでの質疑応答集、Zoom授業でのミニ講義、過去の「じりき通信」、そして自力整体の歴史などである。
これまで長年にわたって研究し、積み重ねてきた知識や経験を、できる限り文章として残しておきたい。
そして、これから自力整体を学ぶ人たちの役に立ててもらえれば、これほど嬉しいことはない。
今日は、その一つとして「五十肩」についてお話ししたい。
私自身がこれまで研究してきた中で、「なぜ五十肩になるのか。そして、どうすれば痛みから解放されるのか」ということについて、現時点で分かってきたことをお伝えしたいと思う。

実は、私も妻も五十肩を経験している。
五十肩というのは不思議なもので、強い痛みがあっても、時間の経過とともに自然に回復していくことがある。
整形外科では、肩の痛みの原因として「腱板断裂」などの診断がつくこともある。
しかし、五十肩と腱板断裂は、必ずしも同じものではない。
腱板断裂があっても痛みが軽減する場合はあるが、断裂そのものが自然に修復されるとは限らない。
私が注目しているのは、画像検査で確認できる組織の損傷だけでは説明できない、肩の動きや全身の骨格との関係である。
五十肩の痛みを考えるうえでは、肩関節そのものだけでなく、肩甲骨の動きや、それを支える筋肉の状態にも目を向ける必要があると考えている。
本来、腕を動かすときには、肩関節だけが動いているわけではない。
肩関節の動きに合わせて肩甲骨も動くことで、腕を滑らかに上げたり、回したりすることができる。
肩甲骨は、腕の動きを助けるために、さまざまな方向へ動ける構造になっている。
ところが、肩甲骨の動きが悪くなると、肩関節との共同作業がうまくいかなくなる。
その結果、肩関節や周囲の筋肉に負担が集中し、筋肉の疲労や緊張が生じやすくなる。
私は、この肩甲骨と肩関節の協調運動が失われることが、五十肩の痛みに関係しているのではないかと考えている。
下のイラストは、肩甲骨が動く方向を示したものである。
【イラスト:肩甲骨の動く方向】

自力整体には、この肩甲骨の動きを助けるための実技がある。
下の写真のような動きも、その一つである。
【写真:肩甲骨の動きを助ける自力整体の実技】


ただし、すでに五十肩になって強い痛みが出ている人にとっては、このような動きを行うこと自体が難しい場合がある。
無理に肩を動かそうとすると、かえって痛みが強くなることもあるため、注意が必要である。
私が五十肩について研究してきた中で、特に注目しているのが、痛む側の肩甲骨の位置である。
五十肩の人の身体を観察していると、痛む側の肩甲骨が、反対側よりも下がっている場合がある。
このように肩甲骨が下方へ移動することを「下制」という。
私は、この肩甲骨の下制が、五十肩の痛みに関係しているのではないかと考えている。
では、なぜ肩甲骨が下がってしまうのだろうか。
そこで注目したいのが、肩甲骨の下方から骨盤につながっている「広背筋」である。
広背筋は、背中の広い範囲を覆う大きな筋肉で、腕や肩の動きだけでなく、体幹の動きにも関わっている。
この広背筋が緊張すると、肩甲骨や肩関節の動きにも影響が及ぶ可能性がある。
そして、私がさらに注目しているのが、広背筋の緊張と背骨のゆがみとの関係である。
背骨がゆがむことで、左右の筋肉の働きに偏りが生じ、それが広背筋の緊張や肩甲骨の位置に影響しているのではないか。
これが、私の研究から得られた一つの仮説である。
【イラスト:広背筋と前鋸筋 骨盤・背骨の関係】


下の写真は、広背筋や前鋸筋の緊張が見られる側の肩が、反対側に比べて下がっている状態を示したものである。
【写真:左右の肩の高さの違い】

五十肩の人の中には、長時間の座り仕事を続けていると、肩の痛みが強くなる人がいる。
私は、これも肩だけの問題ではなく、座っているときの姿勢や、背骨・骨盤のゆがみが関係しているのではないかと考えている。
長時間同じ姿勢で座っていると、背中や腰の筋肉が緊張し、広背筋や前鋸筋の働きにも影響が及ぶ可能性がある。
例えば、下のイラストのように背骨や骨盤がゆがんだ状態になると、左肩に痛みが生じるだけでなく、右の肩甲骨の内側にコリや痛みが出たり、腰がこわばったりする場合がある。
【イラスト:背骨・骨盤のゆがみと、左肩・右肩甲骨・腰の関係】

つまり、左肩が痛いからといって、左肩だけに原因があるとは限らないのである。
肩の痛みと同時に、背骨や骨盤、反対側の肩甲骨、腰の筋肉など、全身の状態を観察することが大切だと考えている。
では、五十肩の痛みから解放されるためには、どのような実技を行えばよいのだろうか。
私が大切だと考えているのは、痛む肩だけを何とかしようとするのではなく、全身の骨格と筋肉のバランスを整えること である。
特に、肩を動かすと痛みが強くなる人の場合は、無理に肩関節を動かすことから始める必要はない。
まずは、痛む側の広背筋や腰方形筋など、背中から腰にかけての筋肉を緩め、背骨や骨盤の動きを整えていく。
例えば、左の五十肩があり、腰が左側へ側弯しているような場合には、肩の痛みを避けながら、腰や背中の筋肉の緊張を緩めていく。
その結果、肩甲骨が動きやすくなり、肩関節にかかる負担も軽減するのではないかと考えている。
ただし、五十肩の原因や症状には個人差があるため、すべての人が同じ方法で改善するとは限らない。
強い痛みが続く場合や、腕に力が入らない場合などには、腱板断裂をはじめとする別の疾患が隠れている可能性もあるため、医療機関での確認も大切である。
私が五十肩の改善において大切にしているのは、特定の実技を一つ行えば、それだけで痛みがなくなるという考え方ではない。
肩の痛みには、肩甲骨の動きだけでなく、背骨や骨盤の状態、背中や腰の筋肉の緊張など、さまざまな要素が関係している可能性がある。
だからこそ、肩だけに注目するのではなく、90分という時間をかけて、全身を丁寧に整えていくことが大切だと考えている。
身体の一部分だけを切り離して考えるのではなく、全身を一つのつながりとして捉える。
そして、痛む場所だけでなく、その痛みを生み出しているかもしれない、身体全体のゆがみや筋肉の緊張にも目を向けていく。
これが、私が長年の研究と実践を通じて大切にしてきた、自力整体の考え方である。
「肩が痛いから、肩だけを治す」のではない。
「肩の痛みを、全身から考える」のである。
この考え方を、これから自力整体を学ぶ人たちにも、ぜひ受け継いでいってほしいと思う。
その他の最新記事
受講に関するご質問やお問い合わせ、通信会員の入退会、取材のお申し込みなど、各種お問い合わせはこちらのメールフォームよりお寄せください。